転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

サマラは唇を噛みしめる。自分の力で助けられるのならどんなによかったか。レヴを助けられるのなら何もかも失ったって構わない、けどそれが出来ないからこうしてリリザに頼んでいるのだ。

「……あのときはごめんなさい。でも私がレヴを好きな気持ちは本当だから。けど……だからこうしてお願いしてるの。私じゃレヴを救えない……! 私じゃ駄目なの。お願いリリザ、レヴを助けてくれるならなんでもするから! お願い……」

言っていて自分の無力さが悔しくて涙が滲んでくる。
リリザは肩を竦め「ふふっ」と満足そうに笑うと、ソファーから立ち上がって言った。

「しょーがないなあ、サマラは。リリザ、優しいから協力してあげる。その代わりレヴはリリザのモノだからね!」

太陽色の髪を煌めかせ自信満々に微笑むリリザの姿は頼もしく主人公としての輝きに溢れていて、サマラはこのとき初めてリリザを――主人公を『羨ましい』と思った。



サマラとリリザはすぐに王宮の地下牢へと向かった。
衛兵や牢番に止められることなく地下牢まで行くことが出来たのは、おそらくリリザの主人公補正のおかげだろう。彼女が「お願い」と愛らしくおねだりするだけで、衛兵たちは「リリザ様の頼みならしょうがないなあ」とあっさり職務を放棄するのだから。
なんとも複雑な気分になるが、今ばかりはそのチートさがありがたいとサマラは思う。

王宮の最北にある塔。倉庫と見張り塔の役割を担っているその建物の地下は、重罪人を閉じ込める牢になっている。
薄暗い螺旋階段を降りた先に、鉄格子をはめた牢が向かい合わせに四つ並んでいた。