転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

ふと頭にあることがよぎり、サマラは勢いよく体を起こす。そしてベッドから飛び降りると自分の書斎まで駆けていき、引き出しの奥に隠してあるノートを取りだした。

もう三冊目にもなる『魔法の国の恋人 サマラ特性オリジナルファンブック』。それをすべて最初から見返し、サマラは口に手をあてて考え込む。

どうして今まで気づかなかったのだろう。
『奇跡の魔法、それは私の愛』――これは、ゲーム主人公リリザの能力になぞらえた『魔法の国の恋人』のキャッチコピーだ。
ゲームでリリザは『奇跡の子』の名に違わぬ特殊な魔法を持っており、クライマックスで魔人に襲われた恋人を救うため特殊魔法『奇跡の光』を発動させるのだ。

その効果は攻略対象によって様々で、大怪我をした恋人を救うときもあれば、建物の崩壊を食い止めることや、翼が生え空を飛ぶことまで出来る。いわば、主人公の望みをなんでも叶えるチート能力だ。

(……リリザなら……『奇跡の光』でレヴを救えるかもしれない……)

そう考えたとき、サマラの心臓が大きく脈打った。点と点が結ばれたような気がする。
もしかしたらという予感は薄々抱いていた。けれどレヴがあまりにもリリザに靡かないので違うのではと思っていたが――。

(もしも……もしもレヴが『六人目の攻略対象』だったら……リリザの力でハッピーエンドを迎えられる……!)

それは打つ手のないサマラにとって縋らずにはいられない一縷の望みだった。