転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

髪を掴んでいる男がさらに絶望的な追い打ちをかけ、サマラは目を見開いて固まった。

(嫌だ嫌だ! なんでこんなことになるの!? せっかくバッドエンド回避のために十一年も頑張ってきたのに、こんな超バッドエンドなんてひどすぎるよ!!)

必死に抵抗しようとするが、猿轡されている口からは「んー! んー!」とくぐもった声しか出ない。
手足を縛られ芋虫みたいにしか動けないサマラを、ボスと呼ばれていた男が担いでベッドへ放り投げた。
起き上がろうとする間もなく乱暴な手がサマラの肩を抑え込み、ドレスの胸もとを乱暴に裂いた。

「――っ……!!」

サマラは顔を青ざめさせて不自由な体でもがくが、ボスは構わずドレスをビリビリに裂いていく。むしろ綺麗なレースやリボンが破かれるたびにサマラの表情が絶望に染まっていくのを楽しんでいるみたいだ。

「さすが貴族のお嬢さんだ。見ろよ、この染みひとつない真っ白な肌。奴隷にしちまうのはもったいないくらいだ。俺の女にしてやるのもアリだな」

すっかりドレスをボロボロにされ下着姿になったサマラは、ガハハと笑うボスを涙目で睨みつける。

(ふざけんな! そんなことになるくらいなら舌噛んで死んでやる!)

十年以上も修業をしたのに、こんなピンチのときに魔法が使えないのが悔しい。しょせんサマラは凡人の魔法使いだ。杖もなく詠唱もできず、ましてや妖精もいない環境では魔法のひとつも発動できない。

(なんでこんな目に遭うの!? 私が悪役令嬢だから? 私は不幸になるしかないの? ……嫌だ! 私はささやかでいいから幸せに長生きがしたいの!!)

生への執念を心で叫んだときだった。