ディーはサマラの手を取りジッと見つめると、「魔力は収まったようだな」と呟いた。サマラはあやうく魔力を暴走させるところだった自分を省みて「ごめんなさい」とシュンとする。
しかしディーはサマラのことを怒る気など毛頭ないようだ。彼はサマラから離れるとまっすぐにティーテーブルの前まで足を進めた。
「アリセルト大臣閣下……。いえ、今日は魔法研究所所長とお呼びしましょう。どうやら御足労を掛けてしまったようで。ちょうどこちらからお伺いしようと思っていたところなのですよ」
最初にディーに向かって声をかけたのはシャーベリンだった。大神官と大魔法使い、まさに水と油のふたりが対峙する。
「どうやらわたくしの『アンチ・マジック』が思いのほか広く影響したようで、ご息女が大変憤慨されております。研究所に被害が出たことは気の毒に思うが、わたくしのおこないは『奇跡の子』を救うためのもの。例え魔のものが多少犠牲になったところで、それは神の思し召しによる尊い犠牲。そのことを親子共々、お心に留めていただきたい」
先ほどサマラに責められたことで、己の非を認めたらやっかいなことになると学んだのだろう。もはやシャーベリンは頑として謝らないようだ。
しかも、彼の画策はそれだけに留まらない。
「この件で、ご息女は怒りに任せ『奇跡の子』を口汚く罵りました。……まあ、まだ年若く未熟なことを考慮しましょう。しかし、魔力を暴走させ『奇跡の子』と王族に身の危険を味わわせたことに関しては、情状酌量の余地もない。アリセルト所長。ご息女の不敬行為について、父親としての責任をわたくしは問います」
しかしディーはサマラのことを怒る気など毛頭ないようだ。彼はサマラから離れるとまっすぐにティーテーブルの前まで足を進めた。
「アリセルト大臣閣下……。いえ、今日は魔法研究所所長とお呼びしましょう。どうやら御足労を掛けてしまったようで。ちょうどこちらからお伺いしようと思っていたところなのですよ」
最初にディーに向かって声をかけたのはシャーベリンだった。大神官と大魔法使い、まさに水と油のふたりが対峙する。
「どうやらわたくしの『アンチ・マジック』が思いのほか広く影響したようで、ご息女が大変憤慨されております。研究所に被害が出たことは気の毒に思うが、わたくしのおこないは『奇跡の子』を救うためのもの。例え魔のものが多少犠牲になったところで、それは神の思し召しによる尊い犠牲。そのことを親子共々、お心に留めていただきたい」
先ほどサマラに責められたことで、己の非を認めたらやっかいなことになると学んだのだろう。もはやシャーベリンは頑として謝らないようだ。
しかも、彼の画策はそれだけに留まらない。
「この件で、ご息女は怒りに任せ『奇跡の子』を口汚く罵りました。……まあ、まだ年若く未熟なことを考慮しましょう。しかし、魔力を暴走させ『奇跡の子』と王族に身の危険を味わわせたことに関しては、情状酌量の余地もない。アリセルト所長。ご息女の不敬行為について、父親としての責任をわたくしは問います」



