転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

周囲に小さなつむじ風や火花が散るのを見て、レヴが慌ててサマラの肩を掴んだ。

「落ち着け! 魔力が漏れ出てるぞ!」

感情と魔力が同調してしまうのは未熟な魔法使いの証拠だ。魔法使いはどんなときでも冷静で我を失わないようにしなくては、魔力を暴走させ魔法を勝手に発動させてしまう。

落ち着かなくてはいけない。そうわかっているのに、リリザの顔を見ていると怒りが抑えきれなくなっていく。

「『たかが使い魔』……? 仮にも魔法使いの端くれのくせに、使い魔がどれほど大切な存在かわからないの……? 運命を共にする魂の片割れでしょう? それを、あなたひとりのせいであんなに苦しませたうえ『たかが』なんて……許せない! あなたに魔法使いを名乗る資格なんかないわ!」

食って掛かるように叫んだサマラの周りに風が渦巻く。周囲の木々がさざめき、テーブルのティーカップの紅茶が逆巻いてしぶきを上げた。

「貴様! リリザを攻撃する気か!? 衛兵、この者を捕らえよ!」

周囲の異常に気づいたバレアン王太子が、とっさにリリザを腕の中に引き寄せながら叫んだ。
そばに立っていた兵士にサマラとレヴは腕を掴まれ、体を拘束される。

「痛っ……!」

「おい! 離せ!」

サマラは抑えきれない怒りと兵士に捕まった動揺で、ますます感情がコントロール出来なくなる。周囲の風はますます強くなり、ついに暴風並みになってテーブルのティーセットをクロスごと吹き飛ばした。

――そのときだった。

「落ち着け、サマラ」

聞き慣れた低い声がサマラの耳に届くと同時に、ぴたりと風がやんだ。水の精や火の精も、スッと活動を停止する。