転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

「……そうです。シャーベリン猊下のなさったことで、多くの使い魔たちが命の危機にさらされました。もし父が……、アリセルト所長が早急に対応してくださらなかったら、おそらく皆、助からなかったでしょう。神殿では他者に甚大な危害を加えた者を、『お詫びいたしましょう』のひと言でお許しになるのですが?」

サマラは引かない。相手が大神官であろうとも、臆さず顔を上げ堂々と冷たい眼差しを見つめ返す。魔法使いとしての矜持も、貴族令嬢としての品格も携えて。

シャーベリンもサマラの真剣な圧を感じとったのか、眉間にしわを寄せ口を噤む。
そのとき。

「やめて、サマラ! シャーベリン様を責めないで!」

ふたりの間に割って入ってきたのは、リリザだった。嫌な予感にサマラは一瞬眩暈がする。

「シャーベリン様は秘術と知りながら、リリザを助けるために『アンチ・マジック』を使ってくれたのよ。そうしなければリリザが危険だったかもしれないって……。そんな勇敢で優しいシャーベリン様を責めるなんてどうかしてる!」

緊迫していた空気がリリザの芝居がかった台詞で白けていくのを感じて、サマラはため息をついた。チラリと横を見るとレヴも冷めた表情をしている。
しかし、リリザが次に口にした台詞に、サマラの感情が大きく揺れた。

「シャーベリン様はこの国の大神官なのよ! たかが使い魔が倒れたくらいで、シャーベリン様の誇りを傷つけないで!」

「――っ!!」

その瞬間、サマラの激しい怒りが魔力と同調し体から溢れだした。
それに呼応するようにどこからから風の精や火の精が集まって、サマラを囲んではしゃぎだす。