転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

サマラにはこんな脅迫を受ける言われはない。けれど、既視感のあるその台詞に謎の後ろめたさが湧き上がった。

(これ……、別のイベントでリリザに意地悪をしたサマラがバレアンに言われるはずの台詞だ……。どうして……?)

「リリザは僕の大切な人だ。彼女を傷つけるということは、この僕に刃向かうことと同じだと心得ておけ!」

ホプロンのこの台詞もそうだ。まったく別のイベントのはずなのに、何故脈絡もなくここで出てくるのだろうか。
そして不可解なことに、サマラの中に感じなくていい気まずさと妬みが募っていく。まるで自分が本当にリリザをいじめたかのような錯覚だ。

まともな反論どころか声が出なくなり、思わず後ずさったときだった。後ろに下がったサマラの肩を、温かな手が後ろから支える。

「おい。さっきから聞いてりゃお前らおかしくねーか? なんでこいつが責められなきゃいけないんだよ。こっちは大変な目に遭った被害者だぞ。頭下げるのはリリザとそこの神官だろ」

臆さず言いきったレヴの声を聞いて、サマラはハッと我に返る。謎の後ろめたさが消え、自分が何をしに来たかを思い出した。

不敬なレヴの言葉にバレアンとホプロンは「なんだ貴様は!?」と憤ったけれど、その場を収めたのはずっと沈黙していたシャーベリンだった。

「バレアン殿下もホプロン殿下も落ち着いてください。……確かにわたくしは『アンチ・マジック』を使いました。リリザの魔力を抑えるだけのつもりだったのですが、思いのほか彼女の魔力が強く、うまくコントロールできなかったようです。それでご迷惑がかかったというのならお詫びいたしましょう」