魔法研究所が戦場のような有様になっているというのに、中庭ではなんとリリザを囲んでシャーベリンとバレアンとホプロンが呑気にお茶会をしているのだ。
無邪気なリリザの笑い声を聞きながら、サマラは腹の底から怒りが湧いてくる。彼女たちは魔法研究所が今どうなっているのか気づいていないのだろうか。
爆発しそうな感情を抑えながら、サマラはお茶会のテーブルへ近づいた。バレアンの護衛の兵士がテーブルの手前でサマラを止めると、リリザたちが気が付いてこちらを向いた。
「サマラ? どうしたの、怖い顔をして」
愛らしくキョトンとするリリザを無視して、サマラはシャーベリンに向かって口を開く。
「大神官シャーベリン猊下。突然のご拝謁をお許しください。私はサマラ・ル・シァ・アリセルト。魔法大臣ディー・ル・シァ・アリセルトの娘です」
サマラが礼儀正しく名乗ると、その名を耳にしたシャーベリンの片眉が一瞬ピクリと動いた。
緑色の長い髪、額に飾られたサークレット、伏し目がちな紫の目。ゲームでは神秘的で麗しいと思っていたシャーベリンだが、今はその人間味を感じられない美貌が不気味に思える。
「先ほど、魔法研究所で異変が起こりました。魔法使いや妖精の魔力が奪われ、常世との繋がりが絶たれたのです。今、魔法研究所は非常事態に陥っています。所員は健康を害し、使い魔の中には命の危機に陥っている者もあります。これは『アンチ・マジック』に寄り起こる異常事態だと思われます。……シャーベリン猊下。この国ではあなたしか『アンチ・マジック』は使えません。不躾とは存じますが、先ほど『アンチ・マジック』をお使いになられましたか?」
無邪気なリリザの笑い声を聞きながら、サマラは腹の底から怒りが湧いてくる。彼女たちは魔法研究所が今どうなっているのか気づいていないのだろうか。
爆発しそうな感情を抑えながら、サマラはお茶会のテーブルへ近づいた。バレアンの護衛の兵士がテーブルの手前でサマラを止めると、リリザたちが気が付いてこちらを向いた。
「サマラ? どうしたの、怖い顔をして」
愛らしくキョトンとするリリザを無視して、サマラはシャーベリンに向かって口を開く。
「大神官シャーベリン猊下。突然のご拝謁をお許しください。私はサマラ・ル・シァ・アリセルト。魔法大臣ディー・ル・シァ・アリセルトの娘です」
サマラが礼儀正しく名乗ると、その名を耳にしたシャーベリンの片眉が一瞬ピクリと動いた。
緑色の長い髪、額に飾られたサークレット、伏し目がちな紫の目。ゲームでは神秘的で麗しいと思っていたシャーベリンだが、今はその人間味を感じられない美貌が不気味に思える。
「先ほど、魔法研究所で異変が起こりました。魔法使いや妖精の魔力が奪われ、常世との繋がりが絶たれたのです。今、魔法研究所は非常事態に陥っています。所員は健康を害し、使い魔の中には命の危機に陥っている者もあります。これは『アンチ・マジック』に寄り起こる異常事態だと思われます。……シャーベリン猊下。この国ではあなたしか『アンチ・マジック』は使えません。不躾とは存じますが、先ほど『アンチ・マジック』をお使いになられましたか?」



