転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

「……おそらくこれはシャーベリンの『アンチ・マジック』だ。この国で使えるのはあの男しかいない。何を考えているのか知らんが、魔法使いへの奇襲攻撃と同じだ」

使い魔たちの治療をしながら、ディーが沸々と怒りを滲ませた声で言う。
この異変がシャーベリンの『アンチ・マジック』だと見抜いたのはさすがだが、サマラはこれが魔法使いへの攻撃として行われたものではないことを知っている。
シャーベリンはリリザの魔力の暴走を抑えるために『アンチ・マジック』をつかったはずだ。――けれど。

(ゲームでは『アンチ・マジック』の影響はこんなに広範囲に及ばなかった。精々周囲一メートルくらいで、リリザの魔力を抑える程度に済んだはず。それなのにどうしてこんな広範囲にまで影響が及んでるの? やっぱりゲームとは色々なことが変わってきている……?)

サマラはゾクリと背を震わせた。そして唇を噛みしめると再びディーにネックレスを預け、「私、ちょっと外を見てきます!」と叫んで廊下を駆けだした。

背後でディーが止める声が聞こえたが、サマラは今何が起きているのか確かめずにはいられない。果たしてゲームと違い、何か大きな争いが起きかねない状況なのか。

「おい! どこ行くんだ!?」

研究所の玄関口でサマラを呼び止めたのは、レヴだった。やはり強大な魔力持ちには効果がないのか、どうやら彼も『アンチ・マジック』の影響を受けていないらしい。元気そうだ。

「レヴ! 無事でよかった! 私、この『アンチ・マジック』の原因を調べてこようと思うの。……考えたくはないけど、もし魔法使いを攻撃するための発動だったら大事だし」