転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

ディーの作ったペンダントだからよほど強い魔力があるのか、水の結晶はマリンを受け入れてくれた。サマラはわずかにホッとしたが、安心している場合ではない。ふらつく足で立ち上がり、魔法研究所へ向かって走り出す。

辿り着いた魔法研究所も『アンチ・マジック』の影響を受けたようで、大変な騒ぎになっていた。魔力を奪われ脱力し立てないでいる者、妖精の加護がなくなり壊れてしまった魔石とそれに伴う道具の数々。所員たちの使い魔もぐったりし、あちらこちらに倒れている。

地獄のような光景の中、サマラは唯一の希望を見つけて廊下を駆けた。

「お父様!!」

「サマラ!」

咄嗟に『アンチ・マジック』を防げたのか、それとも彼ほど強大な魔力ならさほど影響を受けなかったのか。とにかくディーは無事だったようだ。死にかけている所員の使い魔に魔力を分け与えて回っていた。

「無事だったか?」

駆けてきたサマラの肩を掴み、ディーは焦った様子で尋ねる。

「私は大丈夫。でも、マリンが……!」

涙が溢れそうになりながらマリンの入ったペンダントを渡すと、ディーはそれを両手で包んで静かに魔力を注力してくれた。

「……もう大丈夫だ、心配いらない。直にお前の魔力が回復すれば元気になるだろう」

そう言ってディーはペンダントを返すと、サマラの額にも指をあてた。体の中がフワッと温まり、重かった体が軽くなる。ディーが魔力を分けてくれたようだ。

「ありがとう、お父様!」

安堵でディーに抱きつきたくなるが、彼はすぐに廊下に倒れている他の使い魔を助けにいく。今は親子の抱擁をしている場合ではないようだ。