前世の記憶を取り戻してから、サマラの願いは一途で単純だ。
破滅フラグを回避して生き延び、平穏な暮らしがしたい――ただそれだけのために十一年間努力し続けてきたのだ。父との親子関係を修復し、真面目に魔法の勉強に取り組み、敵を作らぬよう品行方正に振舞い。
そして今はひたすらリリザと敵対しないように努めている。それこそ髪を焼かれようとも。
けれど、サマラのそんな抵抗をあざ笑うかのように運命は近づいてくる。破滅への道を大きく開きながら。
それは、サマラたちが見習いとして魔法研究所に入所し三ヶ月が経ったある暑い日のこと。
「冷たくて気持ちがいいよ~。サマラもおいでよ」
「私はいいよ。こんなとこで裸になって水浴びしてたら変態って呼ばれちゃう」
「大丈夫だよお、誰も見てないし」
昼休み、サマラは自然公園にある湖のほとりで昼食を食べていた。
メイザー大陸にも四季はあるので、七月の今は前世の世界と変わらぬ暑い日々だ。サマラが涼みがてら湖のほとりまでやって来ると、ペンダントからすぐさまマリンが飛び出して湖へ飛び込んだ。
妖精に暑さや寒さはあまり関係ないが、使い魔の契約を結んだ妖精は主と感覚も共有する。マリンにはサマラの暑さが伝わっていたのだろう。
水の精であるマリンは楽しそうに縦横無尽に湖を泳ぐ。彼も成長し、見た目はすっかり青年だ。人間の擬態もうまくなったので、最近ではサマラの真似をして見習いの格好をして共に行動したり研究の手伝いをしたりもする。
破滅フラグを回避して生き延び、平穏な暮らしがしたい――ただそれだけのために十一年間努力し続けてきたのだ。父との親子関係を修復し、真面目に魔法の勉強に取り組み、敵を作らぬよう品行方正に振舞い。
そして今はひたすらリリザと敵対しないように努めている。それこそ髪を焼かれようとも。
けれど、サマラのそんな抵抗をあざ笑うかのように運命は近づいてくる。破滅への道を大きく開きながら。
それは、サマラたちが見習いとして魔法研究所に入所し三ヶ月が経ったある暑い日のこと。
「冷たくて気持ちがいいよ~。サマラもおいでよ」
「私はいいよ。こんなとこで裸になって水浴びしてたら変態って呼ばれちゃう」
「大丈夫だよお、誰も見てないし」
昼休み、サマラは自然公園にある湖のほとりで昼食を食べていた。
メイザー大陸にも四季はあるので、七月の今は前世の世界と変わらぬ暑い日々だ。サマラが涼みがてら湖のほとりまでやって来ると、ペンダントからすぐさまマリンが飛び出して湖へ飛び込んだ。
妖精に暑さや寒さはあまり関係ないが、使い魔の契約を結んだ妖精は主と感覚も共有する。マリンにはサマラの暑さが伝わっていたのだろう。
水の精であるマリンは楽しそうに縦横無尽に湖を泳ぐ。彼も成長し、見た目はすっかり青年だ。人間の擬態もうまくなったので、最近ではサマラの真似をして見習いの格好をして共に行動したり研究の手伝いをしたりもする。



