転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

気を取り直して食事を再開させようとサマラがフォークを持ったとき、ディーが「それから」と再び口を開いた。

「……他に、お前に危害を加えたりしている者はいないか。例えば……馴れ馴れしく接してくる者とか」

歯切れ悪そうに言ったディーの言葉にサマラは小首を傾げ、「大丈夫です。皆さん、良くして下っています」と答える。するとディーはどこか気まずそうに目を逸らせて「そうか」と言った。

「困っていないのならいいが……油断はするな。何か異常を感じたらすぐ俺に言え」

「は、はい……？」

何故そんなことを言うのか疑問で、サマラは間の抜けた返事をしてしまう。見習いたちはともかく、それ以外の所員とは昔からの顔なじみだ。どうして今さら警戒するようなことを言うのだろう。

サマラが不思議に思い小首を傾げていると、カレオがククッと肩を竦めて笑った。

「サマラ様もお年頃ですからねえ。見習いになって今までより閣下のお手もとを離れたことで悪い虫がつかないか、心配でたまらないんですよね？　閣下？」

なるほど、そういうことかとサマラは納得する。ディーは年頃の娘の異性関係を気にしているらしい。

すっかり人並みの父親になったディーに、カレオは実に嬉しそうに目を細める。すると次の瞬間、ディーのグラスのワインが勝手に飛び出し、カレオの顔面に直撃した。

「黙れ。余計な口を挟むな」

友人の微笑ましいからかいになんてことをするのだとサマラは目を丸くしたけれど、カレオは怒るでもなくニコニコしながら「またまた～。照れちゃって」とずぶ濡れになった顔をナプキンで拭いていた。