転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

(破滅エンドも嫌だけど、こんな物騒な争いに巻き込まれるのも嫌だ! 私はディーと一緒に平和に長生きがしたいの!)

「あの、お父様。リリザへの退所勧告はもう少し待っていただけませんか? 確かに彼女は未熟な点の多い見習いですが、きっと環境に慣れていないだけだと思います。魔法使いとして覚醒してまだ三年ですもの。魔法の世界に慣れ親しむうちに、きっと失敗もなくなるはずです。私も出来るだけ彼女をサポートしますから」

もとはリリザに対する不満を吐き出していたはずなのに、何故か庇う立場になってしまった。けれど波風を立てないためには、致し方ない。

ディーは納得のいかない渋い顔をしている。その視線の先は、哀れに短くなってしまったサマラの髪の毛だ。

「……また迷惑を掛けられるかもしれんぞ」

呟くように言った警告に、サマラは眉尻を下げて笑った。

「まあ……多少くらいなら。髪の毛を焼かれるのはもう懲り懲りですけど」

やはりディーは納得がいっていないようだが、大きくひとつため息を吐きだすとグラスを持ってワインをひと口飲んだ。

「今回だけは大目に見る。だが次に問題を起こしたときは即刻退所だ。たとえ神殿と諍いが起こるとしてもな」

ひとまずは物騒な争いは回避されたが、どうやら予断は許されないようだ。
これ以上リリザが大きな失敗をやらかさないように、なんとか阻止しなければならない。

「ありがとうございます、お父様」

ニコリと微笑みながら、サマラはリリザとさらに密接な関係になってしまう予感に辟易とする。結局彼女と無関係でいることは無理らしい。これもまたゲームキャラクターの運命なのだろうか。