転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

そのたびに周囲の人間は『でも、それもリリザの魅力のひとつだよ』だの、『気にすんなって。俺が助けてやるから』などと目じりを下げながら戯言を吐くものだから、サマラは怒りを通り越して眩暈さえする。

サマラも子供の頃はよく研究所の所員に可愛がってもらっていたが、当然こんなデタラメな対人関係ではなかった。間違っていることをすればきちんと注意をしてくれるし、サマラが誠意をもって接するから、皆それに応えてくれていたのだ。

けれどリリザは違う。彼女がどれだけ間違ったことをしようと「いっけなーい」と舌を出すだけで、所員は老若男女かかわらず「これだからリリザは」と言って笑うだけなのだ。

この不条理な光景にサマラはブチ切れたくなるが、リリザとは揉め事を起こしたくない。唯一レヴだけがまともで『この研究所の奴らって頭おかしいのか？』とサマラと同じ反応をしているのが救いだ。

レヴの言う通り研究所のリリザに対する態度は異常だと思うが、もしやこれは主人公補正というものではないかとサマラは考える。
何をしても主人公の都合よく世界が動き、誰もが彼女を愛する。ゲームでもリリザは持ち前の明るさで、攻略キャラだけでなく周囲の人を惹きつける愛されキャラだった。もっとも、こんな壊滅的なドジっ子ではなかったが。

主人公補正がかかっている以上、サマラはますますリリザと対立するわけにはいかない。もし表立って彼女を責めるようなことがあれば、周囲はリリザの味方をし、あっという間にサマラは悪役にされてしまうだろう。