転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

サマラは子供の頃からの必死の訓練の甲斐があって、人並み以上の魔力を開花することが出来た。ゲームではまったく努力をしなかったせいでほとんど魔法が使えず、アリセルト家の名声を盾に入所してディーの顔に泥を塗ったことを思えば上出来だろう。
もっとも、ディーやレヴに比べたら凡人もいいところだけれど。

魔力という点ではリリザもかなりのものを持っていた。突然の覚醒でこれだけの魔力が備わっていれば、『奇跡の子』と呼ばれるのも納得だった。
ただし、魔法使いであることを自覚したのが遅かったせいか、はたまた魔法とは縁遠い場所である神殿で育ったせいか、リリザは魔法に関する知識は相当に低い。研究の手伝いをしていても専門用語や物の名前がわからず、周囲の人に聞く有様だ。勉強で補える知識に関しては大人並みのサマラと対照的といえる。

そんな調子で入所から一ヶ月が経ち、見習いたちもそろそろ新しい環境に慣れ始めてきた頃――。

「はあ……」

サマラが無意識に零したため息に、一緒に食卓に着いていたディーとカレオが反応して顔を上げた。

「お疲れですか、サマラ様」

そう朗らかに声をかけてくれたのはカレオだ。
今夜の晩餐は遠征帰りで休暇中のカレオも招いて、三人でテーブルを囲んでいる。
ため息を零したことに気付いていなかったサマラは一瞬「えっ?」とキョトンとしたけれど、心配そうな眼差しを向けているふたりを見て、自分の行動を悟った。

「ごめんなさい、せっかくみんなでお食事を摂っているときに。なんでもないの、ちょっとだけ疲れたみたい」