魔法研究所で見習い期間に学ぶことは、大きく分けてみっつとなる。
ひとつは魔法官としての公務。魔法官はその名の通り魔法を担当する官僚だ。他の官僚と話し合い魔法研究の予算を決めたり、他国と連携を取り魔物の情報や研究の成果を共有したり、妖精のために自然保護の啓もうを務めるなどしている。
見習いの間はそれらの基本内容や法律を座学で勉強し、ときには現役の魔法官にくっついて現場にも行ったりする。
ふたつ目は魔法研究所員としての務めだ。
薬草や魔法に関する道具の生成、それらをさらに改良する研究。いにしえの魔法書の解読、失われた魔法や妖精に関する遺跡の発掘。それらに伴う論文の制作と発表。
所員はそれぞれ得意な分野に分かれ、研究室をもっている。見習いは専門性を学びながら研究の補佐をするのが務めだ。
そしてみっつ目は、魔物を駆逐するための特訓である。
国内に出現した脅威を祓うのは、魔法使いの最も大事な務めと言えよう。
人里には結界が張られているので早々脅かされることはないが、油断は出来ない。
見習いは基礎体力をつけ、実践での戦術を学び、さらに戦うための魔力を高めなくてはならない。
官僚、研究員、戦闘員。魔法使いはそのみっつを兼ね備えたハードな職業でもあるのだ。
もちろん、それが嫌で研究所に所属しない者もいるが、そういった者は国家公認の魔爵位は賜れず、いわば「モグリ」といわれるようになるため、ごく少数だ。
今年の見習いは五人。そのうちのひとりが大魔法使いの娘で、ひとりが異例の覚醒をした『奇跡の子』、さらには大人顔負けの魔力と技術を持つ少年と、非常に注目度の高いメンツが揃っている。



