転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

サマラの表情がムッとしたことに気付いたリリザは「あっ!」と慌てたように手で口を押さえてから「ごめーん。リリザってば、思ったことすぐ口に出しちゃうの」と舌を出した。

「悪気はないの。だからそんなに怒らないで、ね?」

「……別に怒ってないわ。気にしないで」

「本当? よかった、サマラに嫌われたかと思っちゃった!」

正直なところ、ちっとも悪びれていない謝罪に腹の虫は収まっていないが、これ以上相手にしたくない。サマラは無理やり口角を上げて微笑んだ。

「おい、何やってんだよ。さっさと行くぞ」

リリザとのやりとりを見かねたのが、レヴが声をかけてくれた。彼の助け舟に心の中で(ナイス、レヴ!)と感謝しながらサマラがその場から逃げ出そうとする。ところが。

「サマラのお友達? 私、リリザ・ミモランダ。よろしくね! あなたは?」

サマラの前に躍り出たリリザが、すかさずレヴに話しかけた。

(おいおい、全員に自己紹介するつもり? それ今じゃなきゃ駄目? 移動時間が……)

思わず困り顔になってしまうが、リリザは気づいていないようだ。レヴも呆れたように嘆息し、「レヴ。……レヴ・シッテン」と名前だけ投げやりに答えた。

しかしサマラは密かに驚愕する。十年以上の付き合いになるが、彼の姓を始めて知った。しかも……『シッテン』は生まれつき姓のない者、つまり親が不明の孤児につけられる姓だ。

(レヴって孤児だったの? それなのにあんな強大な魔力を持ってて、幼い頃から王宮に出入りしてて……いったい何者?)