君が隣にいたから、こんなにも楽しかったんだ。

君を手放すことなんてできないよ。
こんなにも好きになってしまったんだから。

黙ったまま悠哉を見上げる私に、彼が怪訝そうな表情を浮かべる。

今から君への想いを伝えるから。

私はありったけの勇気をかき集めた。生徒会長に立候補した時の立会演説よりもっと沢山の勇気を。

ドクドクドクドクと、さっきとは比にならないほどの強さで心臓が音をたてている。顔が真っ赤になっているのが鏡を見なくても分かる。

たったの二文字を言うのがこんなに大変なんて。

恋をする前は、知らなかった。

私はゆっくりと口を開いた。


「......好きです」


かすれて消え入りそうな声。

なんだか泣きそうになりながらも、彼から目は放さなかった。

驚くほど静かな空間に、私の鼓動だけが響いている。

............ダメかな、やっぱり。
私なんかが君の彼女になりたいなんておこがましかったかな。

そう思ってうつむきかけた瞬間、悠哉が私に笑いかけた。


「俺も」

「............っ......!」


彼は少しはにかみながら頭をかく。

「俺から言えなくてごめん」

私は言葉が出ずに、必死に顔を横にふった。涙がポロポロとこぼれてくる。

「ちょ、泣かないでって」
「......う、嬉し涙だからっ......いいのっ」
「......何だよそれ」
「っ、だって......、ひゃっ」

彼の手がすっとのびてきて私の頬に触れた。私のからこぼれる涙をぬぐう。

冷たい手が、真っ赤になった私の顔を冷やしてくれる。