私の心臓がドクドクと脈を打ち始めた。ねぇ、もしかして......。

「......そろそろ帰る?」

............っ......、だよねぇ......。

真っ赤になってた顔を、見られないように慌ててそらす。

そんな言い方、期待しちゃったじゃん。
やっぱり私の勘違いだったんだね。
うつむいたまま、声を絞り出す。

「......帰ろっか」
「ん、じゃあな」
「じゃあね」

彼はそのままくるりと後ろを向き、地下鉄の改札に向かって歩きだした。

ねぇ、本当にこれで良かったの?
明日からはもう、一緒に帰ったり出来ないよ?

......分かってるよ。そんなの分かってる。中学に入って距離が離れてしまったのも仕方がないこと。

本当にいいの?

いいの。

思いを伝えるチャンスは今しかないよ?

どうせ振られて終わりなんだから。人気者の悠哉は、私なんて眼中にないんだ。


..................でもっ............!


私は彼を追って駆け出していた。

頭より先に気持ちが彼に向かって走り出す。止まらせることなんてできない。

改札への階段を下ろうとしていた彼の制服をぎゅっとつかむ。

「前原......?!」

驚いたような顔で悠哉が振り向いた。

私は、はあはあと息を切らしながら彼を見上げた。幼稚園の時は私の方が高かったのに、今では彼が頭1つ分くらい大きくなっている。


............あぁ、好きだ。


この、悠哉と生徒会で活動ができた1年間の想い出がぶわっと脳裏に広がった。

金曜日の放課後の定例会も、大量の書類作りも、生徒総会も、学校説明会も、一緒にまわった文化祭も。......あの放課後も。


全部全部全部。