「今日で最後だね........」

夕日が差し込む生徒会室には私と副会長の高野悠哉の2人だけ。特に用もなく、机の上のペンたちを整理しながら私は呟いた。

「うん、そうだね」

悠哉は、コピー機の前でしゃがみこんでいる。何代か前の生徒会が壊したコピー機。また直そうとしているのだろうか。1年間、何回やってもむりだったけけれど。

無言のまま数分が過ぎた。もう、やることはない。ペンたちはこれ以上ないほどきれいに並んでいる。

部屋がすっと暗くなった。日が沈むのがだんだん早くなる季節。

「キーンコーンカーンコーン」
「........5:00になりました。残留届けを出していない一般生徒は下校しなさい。繰り返します......」

「........帰ろっか」

悠哉はリュックを背負った。私も彼に続いて生徒会室から出る。
いつも通り職員室に生徒会室の鍵を返し、階段を下り、靴をはきかえ、校舎から出た。いつもと違うのは、これが最後、ということだ。

何も話せないまま、大通りを駅へと向かう。どうしよう、これが最後のチャンスなのに。明日からは、こうやって彼と一緒に帰ることもできなくなってしまう。

夜空の暗さと繁華街のネオンの明るさが私の心を焦らせる。

気まずい空気に耐えられなくなり、口を開いた。

「........生徒会に入ってくれてありがとね」
「うん。思ってたより楽しかった」

私も君がいたから楽しかったよ、なんて言えたらいいのに。そんな勇気は出ずに、もごもごとうなずく。

「会長もお疲れ様」