「さすがシバ社長。
 やっぱ悪魔だな…」

「おい、聞こえてるぞ」


小声で呟いた独り言のはずだったのだが
不幸にも本人には聞こえていたようだ。


「あの時の社長は
 あんなに優しかったのに
 夢だったのかしら?」

「お前ッ
 イチイチ掘り返すなッ」


先日のイトカの家出で
お互いの愛を確かめ合ったとは言え
それが日常に反映するとは限らず
相も変わらない言い争いは続いていた。


「あのー。
 痴話喧嘩を会社に持ち込まないでください。
 それにシバ社長。
 この後のスケジュールが立て込んでいて
 そんな事している場合じゃないですよ」


誰よりも1番冷めているのは
他ならぬ鮫島だ。
少々うんざりしながらも
2人の良き仲介役…のはず。



そして金我はと言うと。

”社長夫人に近付くな”との
上層部からは監視の目が厳しく光り
女性達の訴えで何かと処分も下り
金我は消えるように大人しくなった。