「……くれぐれも相手にさとられないように、慎重にする必要がある」

「はい」

「……平林。巻き込んで、すまない」

「いえ。気にしないでください。ここに来た時点で、もうこうなっていましたから」

「ありがとう」

「えっ!?ちょ、蜂谷さん!?」




蜂谷隆平が、平林繭香を抱きしめる。

平林繭香も、それを受け入れるかのように、背中に腕を回した。





「はち……」

「……黙って」

「え……?」




蜂谷隆平が、平林繭香の唇にキスをした。

平林繭香も、最初は驚いたように、目を開けていた。




だけどそれを受け入れ、そのまま目をとじてキスをした。

キスしたのが何故か、蜂谷隆平にもわからなかった。




恐らく、無意識の行動だったんだと思う。

唇が離れた時、ごめんと一言だけ言った。




「……謝らないで、ください」

「こんなこと、するつもりじゃなかったんだけど……」

「……わたし、嬉しかったです」