「子供が出来たと伝えても認知してもらえず、追い出されたことが、この殺人のきっかけかと思われます。しかも父親である主さんは知らないフリをして、奥さんと一緒に、住んでいたみたいなんです」
「……残酷な話だな」
「はい。これはすべて、その彼女が書いた日記です。出産してからはひとりで島本さんを育てていた野上早智子さんだけど、お金もなく仕事も失った。そして島本さんを、養子縁組に出したそうです」
「……だから、親子なのに名字が違うんだな」
「そうみたいです。島本さんの家で養子になり育ててもらっていたみたいなので」
「………じゃあなんであの日、島本さんはここに?」
「野上早智子が連れ去ったらしい。主にも捨てられ何もかも失った。だからこそ、死のうとして自殺者を募集し、みんなで一斉に死んだ。娘である島本も、時が経つに連れ憎い存在になった。だから心中しようとして、島本を連れ去った」
「……かわいそう、島本さん」
「だけど島本は間一髪のとこで逃げ切り無事に死なずに済んだ」



