「……江川くん、大谷くん、そっちは何かあった?」
「……いや、何も」
「俺も特には」
「……あたし、こんなの見つけたんだけど」
「ん?なんだよそれ」
「……写真なんだけどさ、これ見てよ」
「ん?……これ、誰だ?」
「分からない。でも写真の後ろに日付が書いてあるの」
「日付?」
「そう。見てよこれ。10年前くらい前のなんだけど……この人ね……」
「なんだよ?もったいぶらずに言えよ」
「ーーー野上、早智子さんらしいの」
「野上?野上早智子って……」
「あの資料に、書かれてた女の人だよな?」
「……その写真の人に、娘が居たんだって」
「娘?でもそんなの、資料になかったよな?」
「ーーーそれが、あの集団自殺の日にいつの間にか、居なくなっていたみたいなんです」
「え?居なくなった?」
「はい。ここに日記があるんですけど、この日記、その女の子が書いたものなんです。引き出しから出てきました」
「……日記?」
「たぶん娘さんだと思います。当時はまだ小学生くらいだった思います」



