「俺さ、自然体の雨音と撮れて本当は嬉しいんだ。近い将来に、こんな思い出もあったなぁ〜って笑い合える日があるかもしれないでしょ?」


「自然体の私……」


片桐くんの言葉を聞いて、胸にストンと落ちた。そんなこと、考えたこともなかったから。


「それに、これから何度だって写真は撮れる。だから今、無理して笑う必要なんてないと思うんだ」


「片桐くんって優しいね。今なら片桐くんがモテる理由がわかった気がする」


性格の根本は変わってない。
片桐くんと話していると、小さい頃の記憶がだんだんと鮮明になってくる。


どうして今まで忘れていたんだろう。


「今までは、そう思ってなかったの?」


「だって……片桐くんがチャラいから」


「俺が本当に優しくしてるのは、雨音だけ。
それに彼女をコロコロかえていたのは……いや、なんでもない」


「……」


言おうとして、途中でやめた言葉。
それは私にはわからない。


優しくしてるのが私だけ……。
片桐くん、そんなこと言わないで。


私の中で、片桐くんの存在が前よりもずっと大きくなっていくから。


「もうこんな時間……私、帰らないと」


スマホを見ると、夜19時だった。
時間なんて気にしてなかった。それどころか、忘れるほど。


もしかして、私……楽しんでいたの?


「雨音、俺が家まで送って行くよ」


「心配しないで。1人で帰れるから」


「そう?それならいいけど」


片桐くんが送ってくれるって言ってるのに、私は相手を拒絶するようなことばっかり。


深く追求されるかなと思っていたけど、案外あっさり引き下がってくれた。