「片桐くん、その……」


あまりにも泣きそうな顔だったから、私は励ましの言葉をかけようと思った。


口を開いた瞬間、


「はい、取れたよ」


「……え?」


ポカンと口を開けていると、ぬいぐるみを手渡された。


「あれ?もしかして気に入らなかった?それなら、他のを……」


「ううん、これで大丈夫」


「そう?それなら良かった」


さっきのはなんだったの?っていうくらい、普段通りだ。


今さっきのは、演技?それとも……。


だけど、それを聞くことは今の私には早いと思った。


「ありがとう、片桐くん」


私はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。


「どういたしまして。雨音が喜んでくれるなら、俺も嬉しいよ。自分で取ってて、あれだけど……」


「……?」


すごい見られてる。


片桐くん、実は大のぬいぐるみ好きだったとか?


「ぬいぐるみって、ズルいよね。無条件で雨音にハグしてもらえるんだから。ぬいぐるみにヤキモチって変な話だけど」


「ヤキモチ?」


「もしかして……気付いてない?雨音は鈍感だね。でも、そんなところがたまらなく可愛い」


「急に、なに」


可愛いって……私は全然そんなことないのに。
でも、言われるたびにドキッとする。


「ううん、なんでもない。雨音、アレ撮っていい?」


「プリクラ?って写真だよね。む、無理」


「なんで?」


「なんでも!」


実はカメラが大の苦手。
カメラを向けられると、笑顔なんて作れない。


だから、片桐くんから見せられた写真は本当にびっくりした。


そもそも陰キャな私が、自然に笑うなんて無謀な話。