「無理強いはいけないことだと思うけど……これも青春だよ。それに今は誰とデートしてるんだっけ?」


片桐くんは、ガサゴソと鞄からスマホを取り出した。そして、スマホを私だけに見えるように近づけた。


「これって……!」


それは、私がケーキを平らげてる写真だった。


「よく撮れてるでしょ?」


「れっきとした盗撮だと思うんだけど」


「彼女の写真なんだから、問題は何も無いよ。
それで……帰ってから勉強するんだっけ?」


少しはカッコいいって見直してた矢先にこれだ。昔の面影は見る影もない。


「……片桐くんと放課後デートを楽しみます」


なんとなく敬語で返してしまった。


「はい、よく出来ました。
じゃあ、まずはこっち」


ポンッと頭を撫でられる。
褒められるのは嬉しいんだけど、今はすごく微妙な気分。


好きな人に触られてドキドキする反面、私の反応を見て楽しんでいる片桐くんに、これ以上負けたくないという気持ちで板挟み。


「ぬいぐるみ?」


そこには、大量のネコのぬいぐるみが無造作に置かれていた。


「そうだよ。雨音は女の子なんだし、こういうの好きでしょ?
あ、でも無造作に置かれてる訳じゃなくて、ちゃんと計算されてるんだよ。簡単に取られたら店側も困るからね」


心を読まれてしまった。
どうして、私の考えてることがわかったんだろう。


そんなにわかりやすく顔に出てたかな?