「奢ってくれたことには感謝する。でも、明日学校で会った時にケーキ代は返すから」


「律儀だなぁ。そんなこと気にしなくていいのに。それに……また、いつもの九条さんに戻ってる。それも俺は好きだけど、さっきみたいな女の子らしい雨音も見たいなぁ〜なんて」


歩いてる最中、恋人繋ぎにされた。私はただ手を握っていただけなのに。


(そんなこと、しないで)


こんなこと、慣れていないのに……。


いつもの私に戻そうと思っても、片桐くんは許してくれそうにない。


簡単に引き受けてしまったけれど、考えていたよりもずっと片桐くんの彼女のフリが大変そう。


この先、私は正常を保つことができるのだろうか。今から不安だ。


「ほら、着いたよ。雨音」


「あ、ホントだ……」


気がつくと、私の家に着いていた。


ってあれ?私はここである1つの疑問が浮かんだ。


「ねぇ、どうして私の家を知っているの?」


「え……?あれ、その反応だとやっぱり覚えてない?」


「なんのこと?」


片桐くんは困った表情をしていた。


私、なにか変なこと言った?と、頭の上にハテナマークを浮かべていた。