片桐くんの愛は意外にも一途でした

「あ、ありがとう。片桐くん」


さすがに申し訳なさすぎて、お礼をいった。


「どういたしまして。それにしても……雨音でも、そういう女の子らしい顔するんだね」


「それって、どういう意味?」


私は小馬鹿にされてると思い、ムッとした。


「べつに喧嘩を売ってるわけじゃないよ。ただ、いつもそんな風に肩の力を抜いたらいいのにって思っただけ。だって、女の子らしくて、すっごく可愛かったから」


「なっ……!」


突然、片桐くんに褒められて動揺した。嬉しいはずなのに、素直に喜べない。


これは、どんな女の子でも落とすために使ってる口説き文句ってやつだから。


わかってる。わかってるはずなのに、可愛いって言われたら恥ずかしくて、どう反応していいかわからなくなる。


私はそんな簡単に落ちない。


きっと、片桐くんにペースを乱されているだけ。


早く、普段の私に戻れ。


いつかは、絶対に片桐くんの成績を超えてみせるんだから……!と、心の中で、何度も自分に暗示をかけていた。