片桐くんの愛は意外にも一途でした

「あの、これって……」


「ん?九条さんは、今から俺の恋人だよ。手を繋ぐのは当たり前でしょ?」


(そういうこと)


片桐くんの言葉を聞いて、納得できた。でも、恋人同士が手を繋ぐのが普通なんて、なんだか女慣れしているみたいで嫌だな。


って、どうして私はそんなことで嫌な気持ちになっているの?


「あ、恋人だから名前呼びもしなきゃね。……雨音って呼んでもいーい?あ、嫌だったらやめるけど」


「別にかまわない。彼女のフリをするんだから。ただ、お会計が済んでないのに、お店を出るわけには……」


一瞬、下の名前を呼ばれてドキッとしてしまった。でも、それを勘付かれるのが嫌で、平然を装う。


私は差し出された手を握り返して、席を立ち上がる。


ケーキ代を払わないと、とキョロキョロしていると、


「あ、それなら俺が今、払っておいたから気にしなくていいよ」


「え?」


「雨音は俺の彼女なんだし、そのくらいさせてよ。ケーキ代は、今日付き合った記念日ってことで。もう会計は済ませたんだし、行こう?」


爽やかな笑顔で言われた。


フリなはずなのに、どうして、そこまでしてくれるの?