何とか納品がすみ、会社に戻ると21時を過ぎていた。



「一条さんありがとうございました」

オフィスビルの前の通りを歩きながら、涼は頭を下げた。

「こちらこそありがとう。山口くんが電話してくれて助かったわ。あのままになっていたら大変なことになっていた。ありがとう」

「それにしても、一条さんが会社の近くにいてくれて助かりました」

屈託のない笑顔でそう言う山口くんはとてもかわいい。

会社で人気があるのわかるなーー。

なんて思っていると山口くんが興奮した様子で何かを指さしていた。

「一条さん見てみて!!ラーメンの屋台がありますよ!!俺初めて見た。一緒に食べていきません?」

屋台??

21時を過ぎていたため、お腹はぺこぺこだった。玲奈はコクリと頷くと、涼が手を引っ張った。

涼がのれんを上げるとすぐ目の前に4人も座れば、いっぱいになってしまいそうな座席がある。しかし今は誰もいないため、ゆったりと座ることがでた。

「すいません。ラーメン二つお願いします」

「あいよー」

かすれ気味の低い声が屋台に響き、店主がラーメンを作り始めた。

あっという間にラーメンが出来上がり二人の前に置かれた。

「あいよー。お待ちどおーー」

二人は手を合わせると「いただきます」と声を合わせ、食べ始めた。

ズズズズズーーーー。

美味しいーー。

しかし……

んっ……

あれ……?

前が見えない……


一口食べて動かなくなってしまった玲奈に気づいた涼は、心配そうに顔をのぞき込んできた。

「一条さんどうしたんですか?」

玲奈の顔を見た途端、涼が吹き出した。

「ぷっ……。一条さん眼鏡曇っちゃったんですね。眼鏡外した方が良いですよ」

涼は玲奈の眼鏡に手を伸ばすとそっと外した。

「えっ……」

眼鏡を持ったまま固まる涼。

「山口くんどうしたの?」

首をかしげる玲奈の顔を見たまま動かない涼の顔が、見る見るうちに赤くなっていく。

「……っ。いや、大丈夫です。ラーメン冷めちゃうから早く食べましょう」

顔を逸らした涼はいっきにラーメンを食べ始めた。

変なの……?

なんだかよくわからないが、玲奈もラーメンを食べ始めた。