とある日の二十一時頃。
届いたライブDVDを見ていた。セトリはもう完璧。

私が一番好きなのは有栖怜のソロ。
突き抜けるような声で清々しい自画自賛ソングを歌い上げる彼に、惹き付けられて仕方なかった。


「……やばいな」


あの人がアイドルなんて。


届かない、遠い存在。


「……なんでだろ」


あんな出会い、反則だ。
偶然と呼ぶには出来すぎていて、運命と呼ぶには物足りない。


コンビニで買ったプリンを口に運びながらぼーっと眺める。

そのとき、ドアがドンドンと叩かれた。

完全にリラックス状態だった私はその音に飛び跳ね、数秒停止。

だって、夜9時だ。

怖い、怖いよ。インターホンだってあるのに、ドンドンそのまま叩くって、何?

怖い。東京怖い。

硬直状態の私に追い打ちをかけるように取っ手がガチャガチャと動かされる。

やばい、怖い、怖い……!

警察に電話しようかとスマホを探したそのとき。


「おい、開けろ」


声にすぐさま体が反応した。
ドアまで走って、鍵を開ける。


「おせーよ。オレ様を待たせんじゃねー」
「……なにか御用ですか」
「泊まる」
「はあ!?」


ずかずかと部屋に入り込む有栖怜を遮る。