長引いたバイトからようやく帰ると、珍しく怜が帰っていた。
しかもご飯が用意されている。

いつも帰宅が早い私が夕飯を作ることが多いので、彼の作ったご飯を食べるのはなんだか新鮮だった。

「いただきまーす!」

まだ湯気が立ちのぼる白米に結構な厚みのある鮭、薄口のお味噌汁。
怜、意外と和食好きなんだよね。

「美味しい!」
「ん? ああ、そりゃよかったな」

ぼーっと私を見つめていたが覚醒し彼もお米を口に運び始める。
さっきからどこか上の空。

家に帰ってきたらいつもぎゃあぎゃあうるさいくせに、今日はどうしたんだろう。

「なんかあったの?」
「あ? な、なんもねえよ」
「いや、あったでしょ」

指摘されて狼狽えてからご飯をかきこむのは何かある人間の行動だ。
特に怜なんて分かりやすいんだから。

「なんもないっての。それよかこれ預かった」

テーブルににパサリと見覚えのあるノートが置かれる。

「ああ、手塚くんからね」
「おまっ……何普通に呼んでんだよ!」
「えっなにが?!」

怒るポイントが分からず戸惑いながらも、とりあえずノートは回収しておく。

手塚くん、怜に私と同じ大学って言ったのか?
編入は大人たちしか知らないって言っていたけれど。

「兎と授業受けてるって、本当かよ」

下唇を突き出し、完全にむくれている。
私が隠していたのがそんなに嫌だったのか。

……いや待って。2人は絶対に不仲営業なんだ。
だとしたら、自分が手塚くんの編入を知らなかったことにむくれている?!

「ごめん!教えなくてごめん!分かってるから皆まで申すな!」
「そのテンションの謝罪は絶対何も分かってないやつだからな?!」
「いいや分かってる!分かってるから安心して!」

平行線を辿った言い合いは、隣の部屋からの強めな壁ドンで終結した。