ツアーが終わって束の間の休息期間なのか、最近は怜がよくうちにいる。


私も大学の試験をなんとか乗りきって、大学一年生の全過程を終えた。

バイト以外の時間はほとんど怜とゲームをしながら過ごすという、何とも贅沢な休暇を過ごしている。


「そーいえば、オレ様ついに雑誌の専属決まった」
「へーすごいじゃん‥‥‥て、え!?」
「なんだようるせえな」


完全にゲームに意識がいっていた。危うく聞き流すところだった。


「雑誌!? モデル!? 専属!?」
「そう言ってんだろ」


なぜそれを今言う?

思いっきりゲーム中。しかも対戦もの。


ずるい戦法だ。


よくよく聞くと、男性向けファッション雑誌の専属モデル。

そんな、おしゃれで落ち着いた男性がモデルになりそうなものをと思わなくもない。

しかし考えてみれば彼は顔もスタイルもいいのであって、難があるのは性格だけだった。


よって写真だけなら彼の印象はとてもいいものだと思う。


記念すべきデビュー号、絶対買おう。


静かにそう決意しながらも興奮冷めやらぬ私をよそに、怜は涼しい顔でコマンドを打ち込んでいる。


「え? なんでそんなに普通なの? 喜ぶところでしょ、ここ」
「喜んでねーわけじゃねえ。ちょっと起用がおせーんだよ」
「は、はあ‥‥‥」


さすがだった。
怜は怜だった。


「いや、それでもすごいことには変わりないし。
早く言ってくれればケーキとか買ったのに」

「じゃあ今から行こうぜ、コンビニ。お前の奢りで」
「こんな日ぐらいはなんでも奢りましょう」


春が近づく夜の東京。

ほんのりあたたかな風が私の頬をくすぐる。


家の前の小学校の桜並木にはつぼみがついていた。