どうしてもモヤモヤが、いや、なんだろう、この気持ち。

どうしていいか分からない、処理できない気持ち。それを抱えながら帰ることが出来なかった私は、瑞穂に話すことにした。

「ごめん急に……」

「いいけど、どうしたの?」

口にも出せないもどかしさ。

聞いて欲しくて誘ったのに、すぐに話すことが出来ない。そんなに重いことなのか。

「とりあえず、一杯乾杯をしてからにしよう」

素面で出来る話じゃない。

「いいけど?」

エキナカにあるスペインバルに入った。

軽く飲んで食べるにはいい店だ。平日だけど、気軽に飲めるからか混雑していた。

「よし、言う」

「凄い。なんか、覚悟があるみたいに」

「そうなのよ、覚悟が必要なの」

「分かった、言ってみなさい」

私が姿勢を正したのを見て、瑞穂も背筋を伸ばす。

「ふう~」

一度深呼吸する。

「あのね、一ノ瀬さんに告白されたの」

「そう、良かったね」

へ? 驚かない? すごくびっくりする瑞穂を想像していた私は、拍子抜けだ。

「良かったねって、驚かないの?」

「驚かないわよ。逆にいつ告白するんだって思ってやきもきしてた。情けない男ねとも思ってたわ」

「どういうこと?」

「誰が見たって、一ノ瀬さんは美緒を好きなのが分かるわよ。態度に出てるもん」

「いつもクールじゃない」

「美緒には違うの」

瑞穂はそう言って、グイっとワインを飲んだ。

いつから? 私だけ気が付かなかった? いや、そんな自意識過剰じゃない。

「……ずっと優しく見守っている。そんな感じだった。美緒の意識は全ての……生存している男に向けられてない。……ごめん、分かりやすく言った」

哲也のことを言っている。気を使わせてしまって悪いと思う。