鈴と達也の結婚式は、ジューンブライド。翌月に誕生日を控える鈴の希望を叶える、まさにギリギリのタイミングだった。


梅雨の合間の快晴の日に迎えた、佳き日。父の大輔が出席を辞退した為、鈴は最初から達也とバージンロードを歩いた。


誓いの言葉を述べ、指輪と口づけを交わした二人は、ここに正式に夫婦となった。


大勢の列席者が、二人の門出を祝った。その中には、怜奈も梨乃も雅紀も当然いた。


普段はお互いソリが合わないことを自覚して、ほとんど接触のない怜奈と梨乃だが、この日は、鈴の高校時代の友人、大学時代の友人のそれぞれ代表として、披露宴、2次会の盛り上げに協力していた。


披露宴が始まる前、控室に現れた雅紀は


「おい、とうとう押し切ったな。」


と言うと、達也に向かって、ニヤッと笑い掛けた。


「えっ、何を押し切ったの?」


不思議そうに尋ねる鈴に


「何でもないよ。」


と達也は慌てて、答えていた。


披露宴、再び万雷の拍手で迎えられた2人。純白のウェディングドレスに身を包んだ鈴は、ため息が出るほど美しく、その横にタキシード姿で立つ達也もまた、凛々しかった。


「馬子にも衣装って言うけど、本当だな。」


聞こえないのをいいことに、雅紀は失礼な感想を呟いていた。


様々なセレモニー、祝辞、アトラクションと、賑やかに式は進んで行く。


新婦の母親への手紙に、会場が涙し、親族代表の新郎の父、高也のやたらハイテンションな挨拶は、多くの笑いを誘い、緊張を隠し切れず、噛み噛みになりながら、必死に紡いだ新郎の感謝の言葉で、宴はフィナーレとなった。


更に盛り上がった2次会を経て、長くそして忘れられない1日がようやく終わろうとしている。


鈴と達也は、式場に隣接するホテルの一室で、二人きりになった。


平服に着換え、寄り添ってソファに座った2人。


「やっと、二人きりになれたね・・・達也。」


ちょっと躊躇いながら、恥ずかしそうに、鈴は初めて達也の名を呼び捨てにした。


「鈴・・・。」


そんな鈴に、達也も照れ臭そうに、彼女の名を呼び返す。


「今日からは達也と・・・いつでも、いつまでもずっと一緒だからね。約束だよ。」


「ああ、約束する。鈴、愛してるよ。」


「達也!」


次の瞬間、鈴は達也の胸に倒れ込むように、身を寄せた。見つめ合い、そしてお互いの唇が重なる。甘く、そして激しい初夜の始まり・・・。


そして翌日、2人は新婦たっての希望の地である、晩秋のオーストラリアに新婚旅行に旅立った。


こうして、達也と鈴の、結婚生活が始まった。