その後は、もうトントン拍子に事が進んで行った。両家の顔合わせもつつがなく過ぎ
「出来たら、25歳の内に花嫁になりたい。」
という鈴の希望で、日取りも場所も決まった。幸せ一杯の日々を過ごしていたある日、鈴の携帯に見知らぬ番号から着信があった。恐る恐る出てみると
『もしもし、鈴か?』
聞こえて来たのは懐かしくて、切なくなる声。
「お父さん!」
父、大輔からだった。
『元気だったか?』
「うん、お父さんも・・・。」
と言いかけた鈴の目からは、涙が溢れ出して、言葉が詰まる。
『突然、連絡して済まなかった。実は君のお母さんから、君が結婚すると聞いたものだから。』
「えっ?」
母が父に連絡を取ったなんて・・・父を憎悪していると言ってもいい、あの母が。鈴には信じられない思いだった。
『そこで、迷惑でなかったら、君と君のフィアンセと、1度、3人で会いたいんだ。おめでとうを言わせて欲しいし、彼に君のことを頼みたいと思ってね。どうだろう?』
とやや遠慮がちに聞いて来た父に
「わかりました。彼に聞いて、こちらからまた、ご連絡します。それより・・・。」
と答えたあと、一瞬躊躇った鈴は
「お父さん、その前に1度、2人で会えない?」
と言った。
『鈴・・・。』
驚いたような声を出した父に
「お父さんに会いたかったんだよ、お話ししたかったんだよ、ずっと。急に私の前からいなくなって・・・お母さんの気持ちはわかるけど、でも私は寂しかったんだよ。お父さんを嫌いになれなかったんだよ。」
訴えるように鈴は言う。その言葉に、一瞬戸惑ったように黙った大輔は、次に静かに言った。
『お母さんの許可を取りなさい。』
「そんなの必要ない、私はもう子供じゃないんだから。」
『それはわかっている。しかし今、君と私がこうして話せているのは、お母さんが私に君のことを知らせてくれたからだ。君の携帯番号を教えてくれたのも、彼を含めた3人で会って、祝福したいと言ったからだ。私と君が2人で会うことをお母さんが快く思ってないことは君もわかっているだろう。』
「・・・。」
『私はお母さんを裏切ってしまったが、鈴はお母さんを裏切ってはいけないよ。』
そう言うと、大輔は電話を切った。
「出来たら、25歳の内に花嫁になりたい。」
という鈴の希望で、日取りも場所も決まった。幸せ一杯の日々を過ごしていたある日、鈴の携帯に見知らぬ番号から着信があった。恐る恐る出てみると
『もしもし、鈴か?』
聞こえて来たのは懐かしくて、切なくなる声。
「お父さん!」
父、大輔からだった。
『元気だったか?』
「うん、お父さんも・・・。」
と言いかけた鈴の目からは、涙が溢れ出して、言葉が詰まる。
『突然、連絡して済まなかった。実は君のお母さんから、君が結婚すると聞いたものだから。』
「えっ?」
母が父に連絡を取ったなんて・・・父を憎悪していると言ってもいい、あの母が。鈴には信じられない思いだった。
『そこで、迷惑でなかったら、君と君のフィアンセと、1度、3人で会いたいんだ。おめでとうを言わせて欲しいし、彼に君のことを頼みたいと思ってね。どうだろう?』
とやや遠慮がちに聞いて来た父に
「わかりました。彼に聞いて、こちらからまた、ご連絡します。それより・・・。」
と答えたあと、一瞬躊躇った鈴は
「お父さん、その前に1度、2人で会えない?」
と言った。
『鈴・・・。』
驚いたような声を出した父に
「お父さんに会いたかったんだよ、お話ししたかったんだよ、ずっと。急に私の前からいなくなって・・・お母さんの気持ちはわかるけど、でも私は寂しかったんだよ。お父さんを嫌いになれなかったんだよ。」
訴えるように鈴は言う。その言葉に、一瞬戸惑ったように黙った大輔は、次に静かに言った。
『お母さんの許可を取りなさい。』
「そんなの必要ない、私はもう子供じゃないんだから。」
『それはわかっている。しかし今、君と私がこうして話せているのは、お母さんが私に君のことを知らせてくれたからだ。君の携帯番号を教えてくれたのも、彼を含めた3人で会って、祝福したいと言ったからだ。私と君が2人で会うことをお母さんが快く思ってないことは君もわかっているだろう。』
「・・・。」
『私はお母さんを裏切ってしまったが、鈴はお母さんを裏切ってはいけないよ。』
そう言うと、大輔は電話を切った。