眼前に広がる光景、それは暑い陽がサンサンと降り注いでいたあの時とは、違っていたが、微かに残る夕陽に照らされているその場所は、鈴の心を踊らせる。
さっきまでの気まずい空気など、なかったかのように、鈴は達也に右手を預けると、一緒に歩き出した。
あの時と同じように、ついさっきまで、ここは大勢の若者で、ごった返していたはずだ。だけど今は・・・まるで2人以外の人間が、この世界から消えてしまったのかと錯覚するくらい、ただ波の音だけが響いている。
「8年ぶり・・・だね。」
「うん・・・。」
波打ち際まで歩を進めた2人は、最初の出会いの場所となった忘れ難い海を、寄り添って見つめる。
「鈴。」
やがて、呼び掛けて来る優しい声に、鈴はそっと、達也を振り仰いだ。
「この海は、俺達にとって、生涯絶対に忘れることは出来ない、特別な海。」
「はい。」
「君とまさかの再会をして、俺は君と付き合い始めた。やがて・・・次にここに君と一緒に来る時、それは一生に一度の大切な思いを、君に伝える時にしたい。8年前、君に自分の思いを伝えられなかったこの場所で、それを言えるようになりたい。そう、思うようになった。」
「達也さん・・・。」
その達也の言葉に、鈴の緊張感は否が応にも高まる。
「1年前、君のお母さんに、男なら妻になる女性を専業主婦にしても、食わせてみせる、そのくらいの気概を持てって、発破を掛けられた。ハッキリ言って、今の俺の給料じゃ、到底無理。だけど、仕事のスキルを上げて、俺は上を目指してるとせめて、堂々と言えるくらいにはなりたいと思った。主任になって、少し給料も上がったし、岡田を上司として、まずは正式登用まで導くことも出来た。目指した資格も取れて・・・そのくらいでなんだと人には言われてしまうかもしれないけど、でも自分では、その第一歩は踏み出せたつもりだ。」
そう言い終わると、達也は鈴の方を向いた。
「鈴、勉強のことは本当にごめん。少し格好つけたいなんて思って、君に余計な心配をさせてしまった。反省してる。こんな頼りない俺だけど、鈴を愛してます。鈴を幸せにする為の努力は、生涯惜しみません。そして何があっても、鈴を守ります。だから・・・俺と結婚して下さい!」
そう言って、達也は深々と頭を下げた。そして、頭を上げ、鈴を見つめる。
「はい、是非よろしくお願いします。」
そう言って、頭を下げた鈴は、次に達也の胸に飛び込んで行った。
「達也さん、本当にありがとう。鈴はとってもとっても幸せです。そして・・・さっきはごめんなさい。あなたが真剣に私のことを考えてくれてたのに、私、あんな言い方をしてしまって・・・本当にごめんなさい。」
「謝るのは俺の方だ、反省してる。鈴、改めて1つ、約束しよう。これからは、例え、どんなに些細なことでも、隠し事はお互いに絶対にしないって。」
「はい。」
達也の言葉に頷いた鈴。そして2人は、強く強く抱き締め合った。
さっきまでの気まずい空気など、なかったかのように、鈴は達也に右手を預けると、一緒に歩き出した。
あの時と同じように、ついさっきまで、ここは大勢の若者で、ごった返していたはずだ。だけど今は・・・まるで2人以外の人間が、この世界から消えてしまったのかと錯覚するくらい、ただ波の音だけが響いている。
「8年ぶり・・・だね。」
「うん・・・。」
波打ち際まで歩を進めた2人は、最初の出会いの場所となった忘れ難い海を、寄り添って見つめる。
「鈴。」
やがて、呼び掛けて来る優しい声に、鈴はそっと、達也を振り仰いだ。
「この海は、俺達にとって、生涯絶対に忘れることは出来ない、特別な海。」
「はい。」
「君とまさかの再会をして、俺は君と付き合い始めた。やがて・・・次にここに君と一緒に来る時、それは一生に一度の大切な思いを、君に伝える時にしたい。8年前、君に自分の思いを伝えられなかったこの場所で、それを言えるようになりたい。そう、思うようになった。」
「達也さん・・・。」
その達也の言葉に、鈴の緊張感は否が応にも高まる。
「1年前、君のお母さんに、男なら妻になる女性を専業主婦にしても、食わせてみせる、そのくらいの気概を持てって、発破を掛けられた。ハッキリ言って、今の俺の給料じゃ、到底無理。だけど、仕事のスキルを上げて、俺は上を目指してるとせめて、堂々と言えるくらいにはなりたいと思った。主任になって、少し給料も上がったし、岡田を上司として、まずは正式登用まで導くことも出来た。目指した資格も取れて・・・そのくらいでなんだと人には言われてしまうかもしれないけど、でも自分では、その第一歩は踏み出せたつもりだ。」
そう言い終わると、達也は鈴の方を向いた。
「鈴、勉強のことは本当にごめん。少し格好つけたいなんて思って、君に余計な心配をさせてしまった。反省してる。こんな頼りない俺だけど、鈴を愛してます。鈴を幸せにする為の努力は、生涯惜しみません。そして何があっても、鈴を守ります。だから・・・俺と結婚して下さい!」
そう言って、達也は深々と頭を下げた。そして、頭を上げ、鈴を見つめる。
「はい、是非よろしくお願いします。」
そう言って、頭を下げた鈴は、次に達也の胸に飛び込んで行った。
「達也さん、本当にありがとう。鈴はとってもとっても幸せです。そして・・・さっきはごめんなさい。あなたが真剣に私のことを考えてくれてたのに、私、あんな言い方をしてしまって・・・本当にごめんなさい。」
「謝るのは俺の方だ、反省してる。鈴、改めて1つ、約束しよう。これからは、例え、どんなに些細なことでも、隠し事はお互いに絶対にしないって。」
「はい。」
達也の言葉に頷いた鈴。そして2人は、強く強く抱き締め合った。


