ボディタッチという、第一関門をクリアした2人。次は・・・


(キス・・・だよね。)


ハードルが一段階上がった、今度は達也さんからしてくれればいいけど、でも達也さんは紳士だから・・・。やっぱり私がうまくうまく誘導しないといけないのかな、でも、どうやって・・・?


鈴がそんなふうに思い悩んでいるうちに、季節はGWへ。


その日、2人が選んだデートコースは、歴史のある寺院をお参りしたあと、水上バスで、海浜公園に向かうルートだった。


晴天に恵まれ、時節柄、多くの人で賑わう中、鈴と達也は手を繋ぎ、初夏の観光地を楽しんだ。古くからの門前町からシーラインを経て、デートスポットとして名高い海浜公園に降り立った2人。


海岸を寄り添って歩き、ゆっくりと流れる2人の時間を過ごしているうちに、日はだんだん、西に傾いて行く。


「達也さん、あれに乗りたいな。」


と鈴が指差したのは、この公園のシンボルともいうべき大観覧車だった。


「えっ?」


その言葉に、一瞬達也が表情を曇らせたのを、鈴は見逃さなかった。


「ダメ?」


そう甘えるように聞いた鈴に


「い、いや。ここに来て、あれに乗らない手は・・・やっぱりないよな。」


と答える達也。


「うん!」


嬉しそうに頷いて、自分の腕を取る鈴の横で、達也は内心ため息をついた。


夕暮れ時の美しい景色を堪能しようとする行列の最後尾に並んだ2人。それなりの待ち時間を過ごすことになったが、当然退屈なんかしない。


前に並ぶ人々の列が、徐々に短くなって来る。ワクワクしながら、順番を待っている鈴は、ふと横の達也の口数が極端に少なくなったことに気付いた。


「どうしたの?」


「いや、なんでもないよ。」


と平静を装うとするが、明らかに様子がおかしい。どうしたのだろうと、内心首をひねっていた鈴は、ハタと気付いた。


「あの、達也さん。ひょっとして高い所、苦手・・・?」


達也の顔を覗き込むように聞くと


「いや。まぁ得意じゃないけど・・・だ、大丈夫だよ。」


と言いながらも、顔がやや引きつっている。


「そうなんだ、ごめんなさい。じゃ無理しないで・・・。」


と慌てて言った鈴に


「いやいやいや。ここまで来て、乗らないなんて、あり得ないでしょ。絶対に。」


と達也は、自分に言い聞かせるように言った。