結局、梨乃が言ったことが正解なんだろうと、鈴も思わざるを得ない。
(達也さんに告白する、か・・・。)
ハードルが2つあった。1つは
「今は恋愛より仕事。」
という自らの言葉。告白を断る口実であり、本音でもあったこの言葉は、自縄自縛に陥る言葉にもなってしまっていたが、飯田に通用しなかった以上、もうあまりこだわる必要はないのかもしれない。
もう1つはかつて、香織が言っていた
「神野さんって、あまり恋愛に興味ないみたいなんだよね。」
という言葉。そんなに接触しているわけではないが、確かに何回か話した感じでは、鈴も同じ印象を受けた。
要は「がっついてない」のだ。そこが逆に鈴が好ましく思えるところでもあるのだが、しかし達也が正真正銘のいわゆる「草食男子」だとすれば、話はまた別になる。
同期で、達也と同じ部署のひなたは、帰る方向が一緒で、3人一緒に帰ったり、時に呑みに行ったこともあるが
「神野先輩のこと、私、いいなって思った時期もあったんだけど、全くその気ないみたいだし・・・。」
とある時、鈴に言って来た。やっぱりそうなのか・・・と思わずにはいられなかった。
そんなこんなで、躊躇と困惑の日々を送っていた鈴。
この日も、飯田が外出から帰って来る前にと、早めに退社した鈴が、仕事以外で、なんでこんな憂鬱な気分にならなきゃいけないんだろうと、いささかウンザリしながら駅に向かって歩いていると
「あれ?雨宮さんじゃん。」
という声がして、ドキッとしながら、その声がした方を向いた。するとそこにいたのはやはり
「た・・・神野さん。」
達也と思わず、呼びかけそうになって、慌てて言い直す。
「お疲れさん。今日はもう帰り?」
「はい。」
「僕もだよ。せっかくだから、一緒に帰ろうか。」
「はい。」
思わぬ状況に、鈴は夢中で頷く。
「あの、ひなたは?」
「ああ。今日は学生時代の友達に会うって言って、先に帰ったよ。」
そうなんだ・・・まさかの達也との2人きりの時間に、鈴の胸は高鳴る。
そして、あの時以来、久しぶりに2人で話をした。内容は例によって仕事を始めとした他愛のない話だったけど、鈴には心地よい時間だった。
やがて、乗り換え駅に着き、2人は降車。
「今日はお疲れさん。じゃ、また明日。」
そう言って、歩き出そうとする達也に、鈴は思わず呼び掛けていた。
「神野さん、あの・・・これから、お時間ありませんか?」
その言葉に驚いたように、鈴を見る達也。
「よければ、ご相談したいことがあるんです。」
鈴はそう告げていた。
「僕に?」
ますます驚いたような表情を見せる達也に、鈴はコクンと頷いていた。
(達也さんに告白する、か・・・。)
ハードルが2つあった。1つは
「今は恋愛より仕事。」
という自らの言葉。告白を断る口実であり、本音でもあったこの言葉は、自縄自縛に陥る言葉にもなってしまっていたが、飯田に通用しなかった以上、もうあまりこだわる必要はないのかもしれない。
もう1つはかつて、香織が言っていた
「神野さんって、あまり恋愛に興味ないみたいなんだよね。」
という言葉。そんなに接触しているわけではないが、確かに何回か話した感じでは、鈴も同じ印象を受けた。
要は「がっついてない」のだ。そこが逆に鈴が好ましく思えるところでもあるのだが、しかし達也が正真正銘のいわゆる「草食男子」だとすれば、話はまた別になる。
同期で、達也と同じ部署のひなたは、帰る方向が一緒で、3人一緒に帰ったり、時に呑みに行ったこともあるが
「神野先輩のこと、私、いいなって思った時期もあったんだけど、全くその気ないみたいだし・・・。」
とある時、鈴に言って来た。やっぱりそうなのか・・・と思わずにはいられなかった。
そんなこんなで、躊躇と困惑の日々を送っていた鈴。
この日も、飯田が外出から帰って来る前にと、早めに退社した鈴が、仕事以外で、なんでこんな憂鬱な気分にならなきゃいけないんだろうと、いささかウンザリしながら駅に向かって歩いていると
「あれ?雨宮さんじゃん。」
という声がして、ドキッとしながら、その声がした方を向いた。するとそこにいたのはやはり
「た・・・神野さん。」
達也と思わず、呼びかけそうになって、慌てて言い直す。
「お疲れさん。今日はもう帰り?」
「はい。」
「僕もだよ。せっかくだから、一緒に帰ろうか。」
「はい。」
思わぬ状況に、鈴は夢中で頷く。
「あの、ひなたは?」
「ああ。今日は学生時代の友達に会うって言って、先に帰ったよ。」
そうなんだ・・・まさかの達也との2人きりの時間に、鈴の胸は高鳴る。
そして、あの時以来、久しぶりに2人で話をした。内容は例によって仕事を始めとした他愛のない話だったけど、鈴には心地よい時間だった。
やがて、乗り換え駅に着き、2人は降車。
「今日はお疲れさん。じゃ、また明日。」
そう言って、歩き出そうとする達也に、鈴は思わず呼び掛けていた。
「神野さん、あの・・・これから、お時間ありませんか?」
その言葉に驚いたように、鈴を見る達也。
「よければ、ご相談したいことがあるんです。」
鈴はそう告げていた。
「僕に?」
ますます驚いたような表情を見せる達也に、鈴はコクンと頷いていた。



