「俺は・・・いつの間にか自惚れてた。」


「達也・・・。」


「俺は、鈴に好きになってもらって、運命の人だなんて勘違いされて、嬉しかったけど、怖かった。」


「怖かった・・・?」


「だって、鈴が好きになってくれた俺は出来過ぎの俺、「運命」というフィルタ-のかかった虚像。そんなこと自分が一番よくわかってたはずなのに・・・。それでも結婚出来て、それからもいっぱい好きって言ってもらえて、いっぱい甘えてくれて・・・本当に幸せだった。この幸せはずっと続く、続かないわけない。きっとそう思ってたんだろうな。」


こう話しながら、少しずつ達也は落ち着いて来た。


「鈴に『大好き』って抱きつかれて、他の誰も見てないのに、嬉しかったけど照れ臭くて・・・我ながらデレッとしただらしない顔で、そんな君を抱きしめてはいたけど、でもその時、俺も好きだよって鈴に返したのなんて、最近記憶にない。俺の方から君に好きだって、いつから言ってないんだろうって・・・。君に昨日電話した後、ずっと考えてた。」


「達也・・・。」


「そして思った。鈴はそんな俺に、自分だけがいつも一方的に思いを伝えてることに疲れちゃったんだなって。だから幸せに慣れて、胡坐をかいていた俺に、神様が罰を当てたんだなって。」


そう言うと、達也は鈴を見た。


「鈴、もう手遅れかもしれない。だけど・・・言わせて欲しい。」


「・・・。」


いつの間にか、また俯いてしまった鈴を見た達也は、1つ大きく息を吸うと言った。


「俺は鈴が好きです、心から君を愛しています。その気持ちは高橋にも、誰にも負けない自信があります。今まで、俺と一緒に生きてくれてありがとう。もうそれで満足しろと言われてしまうかもしれないけど・・・俺は嫌だ。だから・・・我が儘を言わせてもらう。もう一度、俺を見て欲しい。もう一度、俺の横に戻って来て欲しいんだ。俺と一緒に、これからも人生を歩んで欲しいんだ。鈴・・・俺とこれからもずっと一緒にいて下さい。お願いします!」


そう言って頭を下げた達也が、鈴を見ると、微かに肩を震わせている。


「鈴・・・?」


そう呼び掛けた達也に


「達也・・・達也・・・。」


そう懸命に呼びかけながら、顔を上げた鈴は


「もう1回言って。」


「えっ?」


「今の言葉、もう1回お願い。」


と言うと、潤んだ瞳で、達也を見つめる。一瞬、戸惑った表情を浮かべた達也は、ハッと気がついたように


「鈴、君を心から愛しています。これからもずっと一緒にいて下さい。」


と力強く言った途端、鈴はワッと大声を出して泣きだした。