クールな野良猫男子には逆らえない。

僅かな月明かりに照らし出された横顔は、繊細で儚い雰囲気をまとっている。
触れたら泡になって消えてしまいそうな、そんな脆さを感じさせた。


なんて綺麗な人なんだろう。


私は心の中でほう、と溜息をついた。


だが、それと同時に、悠雅がどこかに行ってしまうような、言い知れない不安感が私の身体をせり上がってくる。


私はそれを打ち消すように、悠雅の手をそっと握りしめた。


「そろそろ入ろっか。風も強くなってきたし」


私の言葉に悠雅が頷いて、お互いに手を握ったままベランダを後にした。


どこにも行かないで、なんて言えない。
悠雅の帰る場所は別にあって、今私の側にいてくれるのは、彼の気まぐれでしかない。


でも、それでもいいから少しでも長く側にいて欲しかった。
悠雅と過ごす一分一秒が、私にとってもかけがえのないものだったから。