クールな野良猫男子には逆らえない。

「……どうしたの?」


見られていることが気まずくなり、思わず作り笑いを浮かべた私に、悠雅が溜息をつく。


「まだその癖治ってないんだな。さっきみたいに思いきり笑えばいいのに」


悠雅に指摘されて、また無意識に作り笑いをしていた自分に気付く。
呆れられただろうか、と思って悠雅を見上げると、彼はまた私の髪を撫でた。
優しい指先の感触に、なぜか胸が高鳴る。


「せめて俺の前では気持ち隠すなよ。俺もガキだから、あんたにだけはつい自分の気持ち押しつけちまうけど、嫌だったら嫌って言えよな」


「あんたにだけは」という言葉が、私の心に優しく染み渡る。
悠雅があんなふうにわがままになるのは、私に対してだけだと自惚れてもいいんだろうか。


「でも、今日はちゃんと自分の気持ち言えてたな。昔みたいにまたあんたと喧嘩できて、ちょっとだけ嬉しかった」


切なそうに目を細めて、私の姿を瞳に映す。


私はドキドキと騒がしい心臓を無視して、平静を装った。


「喧嘩できて嬉しいなんて、変わってるね?」


「嬉しいよ。あんたとの思い出は、ひとつひとつ全てが大切なものだから」


私の髪を撫でていた指先が、離れていく。
悠雅は顔を上向けて、夜空を見た。