クールな野良猫男子には逆らえない。

言葉を失って挨拶するのも忘れた私に、彼女がぺこりと頭を下げる。
私も慌てて同じようにお辞儀をするが、彼女は私のことを特に気にしたふうもなく、そのまま立ち去って行った。


「……今の子って……」


ちらりと悠雅を見上げると、彼は眠そうに目を擦りながらこちらを見ようともせずに答えた。


「友達」


……ただの友達と、香りが移るほど密着するの?


そう聞きたかったけど、もしかしたら私の勘違いかもしれないし、と思い直して、私は笑顔を作って悠雅に手を振った。


「じゃ、またね」


早くこの場を立ち去りたかった。
作り笑いは得意なはずなのに、悠雅の前だと上手く笑えなくなってしまうから。