クールな野良猫男子には逆らえない。

しばらくしてもう一度インターホンが鳴り、私はドアを開けた。


「おかえり、悠雅」


今まで悠雅のことで悩んでいたことなんてなかったかのように、笑顔で彼を出迎える。


悠雅は少しだけ疲れを顔に滲ませて、素っ気なく「ただいま」と言った。


「今夕飯作るね。それとも先にお風呂入る?」


私が問いかけると、悠雅は首を横に振ってソファに身を投げ出した。


「……疲れたから寝る」


そう言ったきり、目を閉じて微動だにしない。
もう眠ってしまったのだろうか。


……そんなに疲れているのかな。
一体何があったのだろう。
気になったけど、結局私は何も聞けなかった。


なぜなら、悠雅とすれ違った時に、彼の服から甘ったるい香水の香りが漂ってきたからだ。