クールな野良猫男子には逆らえない。

悠雅は私の剣幕に圧されることなく、ゆっくりと私に顔を近付ける。
彫像のように整った綺麗な顔がすぐ目の前まで迫ってきて、私は思わず言葉を呑み込んだ。


「嘘はついてない。あんたは俺の姉で、俺はあんたの弟の立場を誰にも渡す気はない。そう言っただけだ。勝手に勘違いしたのは向こう。何か問題ある？」


「悠雅……」


私は何だか頭が痛くなってきて、溜息をこぼした。


実は、悠雅が私と親しくしていた男子にやきもちを焼くのは、これが初めてではない。


子供の頃、私はクラスメイトの男の子とふたりきりで遊んだことがあった。
もちろんただの友達としてだが、それを知った悠雅は一週間私と口をきかなかった。


眠る時はやっぱり一緒なんだけど、悠雅はずっとそっぽを向いて私のほうを見ようとしない。


そのうち寂しさに耐えられなくなった私が大泣きして、何とか仲直りすることができたけど……もう子供ではなくなった今も、悠雅の嫉妬深さは変わっていないらしい。


一番困るのは、私が悠雅が嫉妬することを嬉しいと思ってしまっていることだ。
本当に、私は昔から悠雅には甘い。