「……わかった」


それだけ言って、悠雅は私を熱を帯びた瞳でじっと見つめる。
そして、その形のいい唇が、残酷な言葉を吐く。


「……じゃあ俺が飽きるまでは、あんたの側にいてやる」


昔交わした無邪気な約束とは違う、期限付きの大人の約束。


私の弟は、甘いだけじゃなくて時々苦い。
今日みたいに、一緒にいて苦しくなることもある。


けれど、それでも私は彼から離れられない。
ずっと、私を必要としているのは彼のほうだと思っていた。
でも、今は私のほうが彼のことを必要としている。


いつの間にか、形成が逆転していた。
私の心は彼に捕らわれたまま、もう身動きひとつできない。
だけどそれがとても心地よくて、私は彼に逆らえなくなった。


気まぐれで甘えたがりな、寂しそうな野良猫。
私は、もっと彼のことが知りたいと思った。