「あんたはただ、周りが求める理想を叶えたかっただけなんだよな。そのことは別に最低なことだとは俺は思わない。でも、無理してまで頑張らなくていい。嫌なことは嫌だって言っていいし、文句があるなら遠慮なく言ったらいい。あんたが大人しく従うから、周りも余計にあんたを自分の思い通りにしようとするんだ」


悠雅の瞳はいつもより穏やかで、私の手を包み込む手のひらは思っていたよりもずっと大きくて、私は胸がきゅっと締め付けられるのを感じた。


「……悠雅、なんで私のことそんなにわかってくれるの?」


長い間離れていたはずなのに、まるで今までずっと側で見守ってくれていたみたいだ。


悠雅はふいと視線を逸らし、ボソボソと呟く。


「……わかるよ。あんたのことなら、何でも」


心なしか、悠雅の頬が赤い。
照れているのかな、と思ったら急にかわいく感じてきて、私は自然に笑っていた。


「ありがとう、悠雅。ちょっと元気出た」


久しぶりに心から笑った気がする。
作り笑いじゃない笑顔は、こんなにも気持ちいいものだったんだ。