クールな野良猫男子には逆らえない。

「そういうのが全部自己満だって言ってんの。誰もあんたにそこまで求めてない。私は、柚華にほんとの気持ちをさらけ出して欲しかった。でも柚華は良い子の自分を演じてばっかりで……こんなの友達でも何でもないじゃん」


「……」


菜々の最近の態度を思い出し、私は自分がどれだけ愚かだったかを思い知った。


今までできた友達は、みんな私が優しくすると喜んでくれた。
だから、自分を殺してでも他人を優先させることが正しいのだと信じていた。


私は傘を握りしめたまま途方に暮れて、立ち尽くした。


「……結局さ、あんたは自分が他人よりも優位に立って、他人を見下したいだけなんでしょ」


そう吐き捨てて、菜々は私の横を通り過ぎていく。
私は慌てて菜々を振り返り、その背中に叫んだ。


「違うよ……!見下したいとかそんなふうには思ってない!私はただ、みんなに喜んで欲しくて……」


「もう私に話しかけないで」


冷たく言い放ち、菜々はトイレを出て行った。
私は菜々を追いかけることができなかった。