クールな野良猫男子には逆らえない。

それから朝食を食べ、荷造りをするというお母さんを置いて家を出る。
学校に着き、教室に入ると菜々が私に気付いて近寄ってきた。


「おはよう、菜々」


私はいつものように明るく声をかけるが、菜々は無表情で私の手を掴んだ。


「ちょっと来て」


「……?う、うん……」


そのまま教室を連れ出されて人気のない女子トイレに着き、菜々は私に昨日貸した折り畳み傘を差し出した。


「これ、ありがとう」


「あ、うん……どうしたの?菜々……」


傘を受け取りながら菜々の様子を伺う。
今日の菜々はいつもと違って何だか不機嫌そうだ。
私が何かしたのだろうか……と思い当たることを考えてみたが、菜々の前で「優等生」の仮面を崩したことなんてなかったし……昨日だって、上手くやれていたはずだ。


だが、菜々の口から出たのは予想だにしない言葉だった。